雲と風

随分と長く外で君を見かけていない。君が前のように外へ出たいと思うまで、外の知らせを書こうと思う。
 
今日は雲が厚くて太陽が見えない。といっても雨が降りそうではなく、ただ白い空がのっぺりと広がっているだけだ。でもこういう特徴のない空が一番危険っていうのは知っている。じわじわと君の心を蝕んでいって、気づいたときには重くてじめじめした心に自分自身が沈んでいくような感覚になる。
 
それを解く鍵は、気まぐれに現れる太陽か、みずみずしい春の花だけど、それにすがり過ぎてもよくない。彼らは君のために生きていない。力を借りることはできるが、君の一部にはならない。
 
それよりは風の方がよい。時に強く君の心のほこりを払い、時に優しく君の湿った心を乾かす。風は横を通り過ぎるだけで、君のそばにはいないけど、心が何も吸えなくなる前に、君を揺らして目覚めさせる。
 
雲が動くから風が吹くのか、風が吹くから雲が動くのか、僕にはわからない。だけど、それを調べることが、君の外へ出る理由になるなら、僕は何も知らないままにしておこう。