青い車

僕はカフェの窓から、駐車場に止まっている青い車を見つけた。青といっても、群青色に近くて上品なつやのある、あまり見たことがない色だった。


その左隣には、赤い車が止まった。これまた赤といっても、えんじ色よりやや深みのある、静かな強さを感じさせる色だった。


車はひっきりなしに駐車場へ入ってくるのだけれど、青い車の右隣はなかなか止まらない。白い車たちは、赤と青の素敵な車と並ぶには腰が引けて、そそくさと離れたところに陣取ってしまう。


僕は、赤と青の車の隣には何色の車が似合うか考えていた。黒光りしたハイヤーは、謙虚さに欠けるので相応しくない。かといって黄色い車も元気があり過ぎる。上品だけど気取らない、そんな車を僕は求めていた。


結局その隣のスペースに、白いやんちゃなワンボックスカーが勢いよく突っ込んできたせいで、僕の席から青い車が見えなくなってしまった。これにはほかの白い車たちもため息をついて、窓ガラスを曇らせていた。おまけに、そのワンボックスカーの側面にべったりと貼り付いた鳥のフンが、窓越しに僕のところへ飛び移ってきそうで、僕はもうコーヒーを飲む気すら失せてしまった。


そのとき、チリーンと軽快な音を鳴らし、深緑色の自転車が通った。鈍い光の金属と、見事に調和した色。そうだ、ぼくはあんな車を待っていたのだ。


そう思うと僕はますます悔しくなって、窓のブラインドを下ろした。


しばらくするとエンジンの音がしたので、ブラインドを少し上げて外を見たら、青い車はいなくなっていた。僕は少し後悔した。つまらないことで、見送ることも出来ずに別れてしまったあの子。僕はいつも同じことを繰り返してしまう。