コーヒーシュガーと夜空

夕方5時過ぎにもなって、髪を切りに出かけた。日曜を何もせずに過ごす午前の優越感は、午後に何もしなかったという罪悪感へ変わる。シャンプー台でゆっくりと横になるときに見えた夕焼けはこんがりとしていて、赤いというよりはコーヒーシュガーの色に近か…

青い車

僕はカフェの窓から、駐車場に止まっている青い車を見つけた。青といっても、群青色に近くて上品なつやのある、あまり見たことがない色だった。 その左隣には、赤い車が止まった。これまた赤といっても、えんじ色よりやや深みのある、静かな強さを感じさせる…

川と石

町の北側にある川は、隣町との境界線だ。橋は最近新しくなり、対岸へ渡る人々も随分多くなった。新しい橋に浮かれる者とは対照的に、岸では浮かない顔つきで考え事をする者があちこちに座っていた。フィリップもその中の一人で、川に石を投げながらつぶやい…

悲しいことなんてないさ

悲しいことなんてないさ僕が住むこのビルは雨雲の色を吸い過ぎてすっかり湿っぽくなってしまったけど君が住むあの家は海の色を反射していつだって青く煌めいてる 目に浮かぶのは空との境界線がないあの青い家ある日は空となりある日は海となる僕らは鳥たちを…

雲と風

随分と長く外で君を見かけていない。君が前のように外へ出たいと思うまで、外の知らせを書こうと思う。 今日は雲が厚くて太陽が見えない。といっても雨が降りそうではなく、ただ白い空がのっぺりと広がっているだけだ。でもこういう特徴のない空が一番危険っ…

予定を立てないという選択

僕は明日の予定を立てることをやめた。 明日のすべきことに縛られたくないという思いもあるけど、やりたいはずのことが、むしろ僕を追いかけてくるような切迫感に変わることへ嫌気がさして、明日を考えることをしなくなった。 未来の目標へ辿り着くための近…